著者・原民喜は広島で被爆した体験を名作『夏の
花』などに残した。8月6日の出来事『夏の花』
を挟み、被爆前後を時系列に編集した一冊を読む。
原子爆弾が投下されたその日、著者の生家(広島
市中区)正面に【我が家】は位置してました。本
書は、投下の40時間あまり前、徐々に緊迫して
ゆく様を前日譚の『崩壊の序曲』で、その直後よ
りひと月半後の【街】の様を『廃墟から』に記す。
妹から話を聞き、その事実を知ったのは3年前だ。
これら状況の描写より、著者・生家の正面に居を
構え小さな煙草屋を営み、日々の暮らしを送って
いた勤労動員中学生の父親、祖父、祖母、伯母た
ちの容姿を想像する。『夏の花』文中より、この
地域は大概の家がぺしゃんこに倒壊した。とある。
何度も読み返すことで、自分が生まれてくる前の
近隣の様、また先祖の姿を垣間見ることが出来る。