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『父の日に思う』

朝刊の広告から今日が【父の日】と知る。
そうかあ・・亡き父親のあの日の顔が目
に浮かんだ。高校を卒業して大阪に出て
きた年の、ちょうど今頃でしょうか。父
親から連絡があり、その日の夕方、梅田
で会うことに。当時は下宿生活で普段の
食事は質素なものでした。今日はええも
んが食べられると、足早に目的地へ向か
う。なにがええやろ、やっぱり焼肉かな。

要件があり、大阪に出てきた父親と久し
ぶりに顔を合わすと、ある方向に歩き出
した。どこへ行くのやろ。なんと、そこ
は【立ち食いうどん屋】。ウソやろ、な
んで・・父親は【天ぷらうどん】を注文。
仕方ないのでワタシも同じものを。それ
はないやろ。ひどくがっかりした記憶が
ある。その後、あまり言葉を交わすこと
もなく別れ、とぼとぼと下宿まで帰った。

あの日から随分と年月が過ぎた頃、その
真意を考えてみた。単純なワタシのこと
だ。なんぞええもんが食べれるとノコノ
コ出てきた馬鹿息子に、これから大人に
なってゆく上で、タダで何でも欲しいも
のが得られると思うな、世の中、お前が
思うほど甘くはない。と無言で伝えたか
ったのでは。あの日の【うどん】の味は
今も忘れない。この日に亡き父親を思う。

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